ニキビあとをはじめよう。

多くの人が訴える「冬のゆううつ」とSADは関係あるのだろうか。
気力、睡眠、食行動、気分などの季節に伴う変化を、かなりの人が経験していることが、この研究を始めてから明らかになってきた。
もっとも、その変化の程度には、かなり大きな個人差がある。
季節性の変化があるといっても。
ほとんど問題にならない程度の人がまずおり、その次に、日常生活の中で容易に適応できる程度の場合。
やっかいではあるが、医者の世話になるほどではない場合。
これが一般的に知られている「冬のゆううつ」にあたるものであろう。
そして最後にSADの患者がおり、その気分や行動の変化は、日常生活に多大の問題を引き起こす。
季節に伴う変化のことを明らかにするために、典型的なSAD患者であるジェニーの場合を見てみよう。
ジェニーは、自分のことを「冬と夏でまったく違った人間になるみたい」と感じていた。
春から秋にかけては、精力的で、元気で、生産的な人間である。
自分から会話の口火を切り、社交的で、良き友人、良き同僚、良き部下と思われている。
そして、自分に期待されていることを、なんでもやりとげることができる。
ところが、冬の間は、活力もなく、注意力も低下し、毎日の仕事をこなすのが大変である。
まるで「冬眠中の熊みたいに」、すぐに休みをとって、一人になりたくなる。
春になり、エネルギーと活力と熱情が戻ってくるまで、こういう状態が続く。
ジェニー自身が自分を二人の違った人間ではないかとか、友達が「ほんとうのジェニーはいったいどうなってるのか」と疑問を持つのも、容易に理解できるほどである。
私が出会ってきた何人かのSAD患者の中に、同じテーマを見いだすことができる。
たとえば、ある男性は以下のような手紙をミズーリから送ってきた。
私は夏の数ヵ月しか生きてないようなものです。
それ以外の時は、何もしないで、閉じ込もり、春を待ち、ただ耐え忍んでいるだけです。
こういう状態は我々にとって、深刻な問題です。
なすべきことの半分しかできず、人生の半分しか生きていません。
本当に悲しいことだと思いませんか。
ある女性は年老いた母について、大人になってからずっとSADに苦しんでいる様子を書き送ってきた。
春の終わりから夏の初めにかけては、エネルギーいっぱいで、ほんの五、六時問しか眠る必要がありません。
絶え間なく話し、手に余るほどいろいろなことをやろうとします。
ところが、秋の終わりになると(時にクリスマスの頃になる場合もありますが)、母の性格はまったく変わってしまうのです。
毎日十二時間眠るようになり、毎朝のように泣き、昼寝をとるようになります。
車の運転をせず、外出することもめったになく、電話に出ようともしません。
では、どんな人がSADの犠牲者になるかというと、あらゆるタイプの人が犠牲者たり得る。
私が知っている何百人ものSAD患者は、さまざまの人種、職業を持つ人々である。
二十歳代から四十歳代にかけてが、一番なりやすい時期だが、SADはすべての年齢で起こり得る。
子供や思春期の患者や老年期の患者も経験している。
アメリカ合衆国の全人口の約六パーセントがSADに罹患しており、さらに一四パーセントがSADの軽症タイプに罹患していると、我々は概算している。
この比率でいくと、一千万人から二千五百万人の人が、それぞれのタイプのSADに罹患していることになる。
季節性障害の程度が、個人によって異なるように、障害の起こる時期もまた個人差、かある。
たとえば、ある人は九月に症状が始まると感じるが、他の人はクリスマスまで別に問題がない。
重症の人で、四月になってようやく冬のスランプから抜けでる人もいれば、軽症の人で、三月半ば頃にはもう調子が良くなってしまっている人もいる。
自分がいつ頃から調子が悪くなり、いつ頃には調子が良くなるのか、多くの人は予測することができる。
ちょうど、それぞれの花の開花時期が予測できるようなものである。
症状の現れる時期は、その人が住んでいる場所にもよる。
私の同僚の一人で、アラスカに住んでいるカーラ博士は、自分のSAD専門外米の患者が、メリーランドの患者より、平均して約一ヵ月早く抑うつ的になり、約一ヵ月遅れて調子が良くなるのに気づいたブアリーという三十八歳の不動産業者は、違った緯度に住んだ経験を次のようにその臨床像型的に述べている。
「カナダやニューヨークに住んでいた頃には、ワシントンへ移り住んでからに比べ、症状はもっと早く始まっていました。
」メリルという魅力的な発声カウンセラーは、私の前にすわって、通算何ヵ月の間症状があったか、指折り数えていた。
その結果、総計十八年間、SADの症状を持っていたことがわかった。
彼女は三十二歳だから、人生の半分以上の間、症状に悩まされ続けたことになる。
調子が良いのは五、六、七月のほんの数ヵ月だけです。
八月には、もう気力が落ちてきます。
寝つきも悪くなりますが、まだ仕事に遅れることはありまぜん。
九月になると、調子はもう少し悪くなります。
食欲がふえて、お菓子やスナックがほしくてたまらないんです。
十月には、友達づき合いもあまりしないで、什事もキャンセルしてしまうことが多くなります。
十一月になると、ほんとうの症状がはっきりとしてくるのです。
ゆううつで、夏にはまったく気にならなかったつまらないことで悩みます。
考えもまとまらないし、つまらない間違いをしてしまうのです。
私の調子が悪いことに、まわりも気づきます。
クリスマスの準備は、いつも面倒でたまりません。
クリスマスカードを送ったり、プレゼントを包装したりするのが、ちっともうまくいかないんです。
パーティーも避けるようにします。
だって、礼儀知らずとは思われたくありませんが、家に早く帰って、寝てしまいたいと思っているのに、元気なふりをして、おつき合いをしているのはたまりませんから。
一月、二月は最悪の月です。
仕事に行くのがやっとの日が多く、行くこともできないことがしょっちゅうです。
そんな時は、病気だと電話をかけます。
仕事場まで行っても、仕事に取りかかるのが大変です。
延ばせるだけ延ばしておいて、後からなんとかならないかと思ったりします。
三月、四月と私のエネルギーが少しずつもどってきて、ほっとします。
でも、考えはまだまとまらないし、気持ちが落ち込むことも時々あります。
天気も予想がつかなくて、不安定な時期です。
二、三日調子が良いなと思っていると、突然どかんとまた悪くなります。
それが、春の終わりから夏になると、自分は愛想が良くて、陽気な人間だなと思うようになるのです。
目分の仕事もできるし、周囲に気を配ることもできます。
でも、三ヵ月の間にやりたいことを全部やろうとすると、大変です。
ワシントンでは、個人差はあるが、SADの患者が調子悪いと思いだすのは十一月頃らしい。
夏に感じた喜びがなくなり、不愉快でやっかいな冬がやってきたという、メリルの不安な気持ちは、SAD患者一般に見られるものである。
有名なアメリカの歴史家であるヘンリー・アダムズは、一八六九年の十一月にワシントンからチャールズにあてて、その月の自分の気持ちを書き記した手紙を送っている。
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